「相続税と贈与税の一体化」が注目されています。
これは、”贈与税の対象となった贈与財産に相続税も課す”ということを意味します。
現行税制では、一部を除き生前贈与した財産には、相続税がかからない代わりに贈与税がかかる仕組みです。
諸外国の制度を参考にしつつ、この制度の見直しが検討されており、近い将来、相続税・贈与税の制度が変わるかもしれません。
欧米では、資産の移転について相続時にまとめて課税する方式をとっています。
米国では、一生涯の累積贈与額と相続財産額に一体課税し、ドイツでは相続前10年間、フランスでは15年間の累積贈与額と相続財産額に一体課税します。
税率は、贈与税・相続税で共通のため、米国では生涯にわたる税負担が一定となり、同様にドイツでは10年間、フランスでは15年間、税負担が一定となります。
これらの国では、資産移転の時期の選択に中立的な税制となっています。
これに対し、日本では贈与税と相続税は別体系で課税されます。
生前贈与には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2種類があり、暦年課税の場合は、相続前3年間、相続時精算課税を選択した場合は、選択後の累積贈与額と相続財産額に一体課税します。
贈与税は、相続税の累進回避を防止する観点から相続税よりも重い税率となっています。
このため、財産が比較的少ない層にとっては生前贈与するメリットがありませんが、相当に高額な財産を有する層では、相続財産に適用される限界税率を下回る金額を連年贈与することによって、相続税の累進を回避しながら、多額の財産を生前に移転することが可能です。
また、贈与税には、住宅取得等資金、教育資金、結婚子育て資金の非課税制度があり、贈与による財産移転が有利となります。
以上から、日本の税制は、資産移転の時期の選択に中立的な税制ではありません。
相続・贈与の一体課税が税制に反映されるのは、早ければ来年か再来年の税制改正ともいわれています。
①暦年課税制度を廃止し相続時精算課税制度に一本化するか、②暦年課税制度を存置して生前贈与加算期間を現行の3年から10~15年に延長するか、現時点では分かっていませんが、生前贈与を使った相続対策をお考えの方は、早めの実行をおすすめします。