以前より当法人のお客様であるC様の子D様より、「曾祖父(A)の名義の不動産がある。父(C)が存命のうちに不動産を整理しておきたい。」と相談を受けました。
しかし相談を受けた当時、C様はご高齢で判断能力が不十分とのことから、成年後見人(制度の説明は前月号参照)を立てねばならず、準備をしている間にC様の相続が発生してしまいました。
(以下、敬称略)
① Aが亡くなる直前に旧民法の家督相続制度が廃止となり、現法の遺産相続制度が施行されたが、それをA妻が理解しておらず、Aの長男Bに全てを相続させたものと思い込んでいた。 結果、現在まで登記は放置され、Aの土地の権利を主張できるのは「C妻」「D」「F」「KもしくはL」「N」「他3名」となった。 Dは彼らの一部としか面識がなく、彼らが、DにA名義の不動産の所有権を認めるかは不明である。
② Aの相続人であるKは、所在が不明であり、年齢は100歳を優に超えている。Kの子であるLも、戸籍謄本上でしかKの存在を知らない。
これは現在進行形の事案で、うまくいけば当不動産は「C妻」「F」「L」「N」「他3名」から、Dが時効取得する予定です。
今回、未解決事案をあえてご報告させて頂いたのは、お客様ご自身の判断能力が十分あるうちに不動産の名義等をご確認頂き、いざ相続が発生した時にお子様方が困らないようご準備頂きたい、そう思い至ったからです。
相続登記を行わなくても罰則はありません。しかし、それを放置し今掛かる登記代を節約したところで、先々、見知らぬ親戚に連絡したために財産の一部を要求されたり、当事案のように生死不明の方が居ることにより多くの手間を要したりするかもしれません。
結局、取寄せる書類や手間をお金にすれば、節約した以上に掛かるのです。ぜひ、この機会に財産(資産、負債)の見直しをお勧めしたく存じます。