今年も早いもので年末調整の時期が近づいてきました。毎年、皆さんが記載されている給与所得者の扶養控除等(異動)申告書が少し変わっていることにお気づきでしょうか?
来年より、配偶者控除、配偶者特別控除の額が見直しされます。5月号でもお伝えしましたが、おさらいしておきます。
平成30年分より、本人の給与収入が1,120万円を超えると段階的に配偶者控除(38万円)が少なくなり、1,220万円を超えると配偶者控除はゼロになります(高額給与所得者は増税)。
一方、本人の給与収入が1,120万円を超えない場合は、配偶者特別控除の枠が広がり、配偶者の給与収入が150万円までなら38万円の配偶者特別控除(今年まではゼロ)を受けられるようになります。
いわゆる所得税の配偶者控除を受けられる基準である103万円の壁については、よくご存知だと思います。これに社会保険等を加えてみるとたくさんの壁があります。
・98万円の壁 配偶者本人の住民税が非課税となる給与上限額。
・103万円の壁 配偶者控除や勤務先からの扶養手当(※1)を受けるための配偶者の給与上限額。
・106万円の壁 配偶者の勤務先が大企業の場合、配偶者本人が社会保険料を支払うことになる(※2)。
・130万円の壁 勤務先の規模に関係なく、配偶者本人が社会保険料を支払うことになる(※2)。
・150万円の壁 来年以降、配偶者控除が受けられる配偶者の給与上限額。
・201万円の壁 来年以降、配偶者特別控除が受けられる配偶者の給与上限額。
(※1)勤務先によって基準が違う場合があります。
(※2)社会保険の加入基準を満たしていることが前提です。
配偶者の給与収入が106万円ないし130万円を超えると、配偶者の社会保険料の負担がかなり増える(概ね年収の15%)ので、本人の所得税が増えなくても世帯収入額が減ってしまうので意味がありません。
今回の改正で、103万円から150万円の壁に移動したことの影響はあまりないと言っていいでしょう。そうすると、今までどおり103万円までに抑えるか、正社員になってバリバリ働くか、どちらかの選択になるような気がします。
国税庁から発表されている平成28年分の民間給与実態統計調査によると、昨年1年を通じて勤務した給与所得者は約4,869万人だそうです。財源を確保していくうえで一番手っ取り早いのは、人口の約4割を占める給与所得者から増税していくことだと政府は考えています。今後、給与所得者の概算経費として認められている給与所得控除や基礎控除にも手を入れていくことは確実であり、給与所得者の可処分所得(手取り額)はどんどん減っていく傾向にあると言えそうです。