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トランプ大統領による相互関税

はじめに

最近、「トランプ関税」や「相互関税」といった言葉ニュースや新聞で頻繁に目にするようになってきました。
特に経済政策に関する報道で登場しています。

本稿では、この「相互関税」政策についての背景や内容を整理し、ご紹介いたします。

背景

トランプ大統領は米国と他国との二国間貿易において互恵性が欠如しているとし、特に他国が課す高関税や非関税障壁が、米国の長年にわたる貿易赤字の原因であると主張しています。
このため米国に有利な貿易関係の構築を目指し、米国産業の保護・育成を図るべく、関税政策を強化する方針を打ち出しました。

内容

米国は全ての輸入品に対し一律で10%の追加関税を課し、特定の57カ国には相手国が米国製品に課す関税と同等、またはそれ以上の関税を個別に設定しています。

日本に対しては基本関税の10%に加えて14%の上乗せがあり、合計24%の関税が課されるとされています(なお、14%に関しては90日間の停止措置が講じられています)。

この「14%」についてトランプ大統領は、日本の消費税(付加価値税:VAT)を関税に相当するものとし、上乗せの根拠の一つと主張しています。

本来、付加価値税は国内製品・外国製品を問わず一律に課税されるものであり、関税とは性質が異なります。
しかし、トランプ政権はこれを非関税障壁として米国製品への需要を減少させる要因とみなしています。

なお、上乗せ税率(日本に対する14%部分)の計算の実情は、米国国勢調査局が公表している2024年の輸出入のデータを用い、米国の各国に対する貿易赤字をその国からの輸入額で割った数値のみを使用しています。

米国の日本に対する貿易赤字684億ドル、これを輸入額1,482億ドルで割ると約46%となります。

また、米国の中国に対する貿易赤字2,954億ドル、輸入額4,389億ドルであり、こちらは約67%となります。

この数値はトランプ政権が「相互関税」を課す根拠として、各国が米国に課しているとされる関税率と一致しています。
また、同政権が日本に課す相互関税は24%、中国は34%となり、いずれもこの計算によって算出された数値を2で割った値に近似するものとなります。

最後に

貿易赤字とは単に輸入が輸出より多い状態のことです。
消費や投資、為替などの経済構造の結果でしかなく、米国のようにドルが基軸通貨であり、投資の受け入れが多い国は自然と貿易赤字になりやすい傾向にあります。
貿易赤字の額と輸入額のみに基づいて算出した税率を課すとする相互関税については中々に理解し難いものです。

この度、トランプ大統領が日本の消費税について言及したことにより、日本国内では消費税減税への期待が高まりつつあります。
相互関税の発表以前から減税論が活性化していたこともあり、今回の批判は減税への後押しになるのかもしれません。
いずれにせよ、日本経済がより良い方向に進むことを期待したいところです。